NIPTは胎児のDNAを採取し、染色体に異常がないかを調べる検査です。
通常、染色体は2本が対をなし、人間の場合23対の染色体を持っています。 ところが、そのうち一部が多かったり少なかったりすることを染色体異常と言い、流産や先天性の病気の原因になります。 染色体異常の最も身近で重要なリスクファクターは、母体の高齢 です。
流産の原因の多くは染色体異常であると言われ、もしかしたら妊娠した時点で流産が確定しているのかも知れません。 それどころか、染色体異常を起こした受精卵は妊娠に気づくまえに死んでいる可能性すら推測されています。1 我々男は、性教育やエロ漫画の影響、何億もの種からたった1つが受精できる というストーリーから、受精までの道のりに強いファンタジーを感じますが、 どうやら実は 受精してから妊娠が成立するまでのほうが凄い奇跡 なのではないかと感じました。
NIPTでは特に、 13番、18番、21番の染色体が3本になる トリソミー を調べます。 このうち、13番と18番のトリソミーは高い確率で流産か、産まれても1週間以内に死亡するようです。 そして21番染色体のトリソミーは、 ダウン症 です。
それ以外にも様々な染色体の検査ができるようですが、最も重要なのはこの3つであり、 13番と18番は早期に死ぬのでむしろ大した問題ではなく(おそらく堕胎を勧められる)、 我々夫婦を含む多くの夫婦は、この検査を本質的に ダウン症回避検査 として受けているものと思われます。
検査は妊娠10週という早い段階から受けられて、費用は全額自己負担で15万円ほどです。
胎児の染色体を採取して検査しますといっても、一体どうやって胎児の染色体を採取するのでしょうか? 10週に満たない胚に注射でも刺すのでしょうか? 恐ろしい話ですね。
採取方法はごくごく簡単、安全安心、 母体から採血するだけ で済んでしまいます。 なんと妊娠した母体の血液中には、胎児の染色体の断片が混入している らしく、母体の採血だけで胎児の染色体を採取できるのです。2 検査結果を見ると、胎児の染色体に異常があるかないかだけではなく、その前提として胎児由来の染色体が十分採取できてるかどうかも考慮されています。
従来からある出生前診断の方法である 絨毛検査 や 羊水検査 は直接胎児の細胞を取得するため、 母体の負荷や流産リスクの高いものでしたが、NIPTにはそのようなリスクがありません。
ただ、NIPTは 非確定検査 であり、陰性の精度は高いのですが、 陽性になった場合は従来の検査により確定させる必要があります。
高額な検査費を払ってでも染色体異常の検査を受けたということは、染色体異常のあるなしを なにかの判断材料にする ということです。 お互い明確に意思を表明していたわけではないですが、検査を受けるかどうか全く議論の余地もなく受けるという判断をしたことから、おそらく妻も 異常が見つかったら中絶 と考えていたのではないかと思います。3
これは特に、 東京の出産・子育ては一発勝負 であるという制約が大きかったと思います。 中央値よりそれなりに高い年収を得ていても、 東京で子育てできるのは1人が精一杯 4です。 金銭的なコストの理由も大きいですが、何より厳しいのは 土地 の狭さで、そもそも子供1人分ですら満足に寝る場所や遊ぶ場所を作ってやることができません。
そんな状況なので将来を背負ってくれる兄弟を用意する5ことも不可能だし、そもそも高齢がリスクファクターなので次の子供は更にリスクが高まります。 福祉に関しても、日本の福祉には全く期待できない ことで夫婦の意見が一致しています。 自分たちの死後に障害を持った子が生きていける未来が考えられず、幸福な人生を送るのは無理だろうと結論づけました。